地域課題を動画で解決できる?広報に必要な視点
地域課題を多くの人に知ってもらいたい団体へ、動画発信で関心を高める方法を解説
この記事のポイント
- 地域課題動画の「本当の目的」は再生数ではなく、「特定の行動を増やすこと」
- 課題だけを伝えると「しんどい話」で終わるので、「希望の種」や「動き始めた人」を必ず映す
- SNSでバズるPR動画と、地域課題を理解して動いてもらう動画の「勝ちパターン」はかなり違う
今日のおさらい:要点3つ
- まず「誰に」「何を知ってほしくて」「その後どうしてほしいか」を1文で言い切る
- 次に、その一文をもとに「顔が見える現場」と「数字で分かる現状」を入れた構成案を作る
- 最後に、「視聴後にできる行動」を3つまでに絞り、テロップと概要欄にわかりやすく書く
この記事の結論
地域課題動画は、「課題アピール」ではなく「行動の入口」として設計するべきです。
最も重要なのは、地域の人の顔・データ・視聴者への具体的な一歩を、1本3〜5分に収まるストーリーでつなぐことです。失敗しないためには、「バズ狙い」と「課題理解・行動促進」の動画を分け、前者で興味を惹きつけ、後者で深掘りする「二段構え」の発信を設計することが有効です。
地域課題を伝えようとすると
何度も撮り直すインタビューと、編集タイムラインに並ぶ「ため息」
地域課題やNPOの動画を作るとき、正直なところ、一番しんどいのは「伝えたいことが多すぎる」ことです。
高齢化、空き家、子どもの貧困、孤立、災害リスク…
議会資料や統計データを読み込み、「これも入れたい」とメモが増えていきます。インタビューでは、現場の人が「本当に聞いてほしい話」をしてくれるのです。
編集タイムラインには、リアルな声が並びます。
「夜になると、商店街のシャッターが全部閉まるんです。」 「実は、地域に相談できる場所がないと感じている親御さんが多くて。」
僕も、ある地域の孤立と居場所づくりをテーマにした動画を編集していたとき、夜遅くまでタイムラインの前で手が止まったことがあります。インタビューの言葉を削るたびに、「これを削ってもいいのか」と自問してしまいます。
その結果、以下のような典型的な構成になりかけました。
- 課題の説明が長くなる
- 視聴者に「重い話だな」と思わせてしまう
- 「で、自分に何ができるの?」が見えない
これは、典型的な「真面目だけど見られない動画」です。
正直なところ、地域課題動画は「真面目であること」自体は簡単です。難しいのは、「見たい」「誰かに見せたい」と思ってもらえる形に仕上げることです。
地域課題を動画で伝えるときに押さえる3つの視点
「誰に」「何をしてほしいか」を最初に決める
マイクロアドの自治体向け動画プロモーション解説では、自治体動画の目的として以下が挙げられています。
- 認知度向上
- 関係人口・移住促進
- 地域産品の販促
- 地域課題の理解促進
そして、「誰に」「どの行動まで促すか」を明確にしないと、動画のメッセージがぼやけると指摘しています。
総務省の「映像コンテンツを活用した地域情報発信の調査」でも、以下のように整理されています。
- 動画は短時間で情報を伝えられ、インターネット利用率の高い若年層への認知に有効
- ただし、ターゲットと目的を明確にしないと、再生はされても行動には繋がりにくい
僕がある中山間地域の動画を作ったとき、最初の打ち合わせで担当者が以下のように苦笑いされました。
「正直なところ、『みんなに見てほしい』って言いたくなるんですが…。」
そこで一度立ち止まり、「まずは『帰省してくる出身者に、地元の今を知ってもらう』ことに絞りましょう」とターゲットを限定しました。
- ターゲット:その地域の20〜40代出身者
- 見せたい姿:商店街の新しい試み、子どもたちの表情、空き家活用の動き
- してほしい行動:一度遊びに来る、寄付・クラファンに参加する
この3つを整理したところ、構成が一気に描きやすくなりました。
「よくあるのが」、ターゲットを「市内外のすべての人」と広げすぎてしまうことです。ケースによりますが、まずは「誰に何をしてほしいか」を遠慮なく絞った方が、結果として伝わる動画になります。
「課題」だけでなく「動き始めた人」と「小さな変化」を映す
地方自治体の戦略的広報に関する研究では、以下が報告されています。
- 動画を活用した観光プロモーションが、地域愛や誇りの醸成にも繋がった事例
- 地元住民自身が、自分の地域の魅力を再発見する効果
同じことが、地域課題動画にも当てはまります。NHK放送文化研究所のレポートでも、地域局で増加している「課題解決型コンテンツ」の特徴として以下が挙げられています。
- 視聴者の声から課題を拾い上げる
- 地域で行動している人に焦点を当てる
- 課題の「暗さ」だけでなく、「希望の芽」も見せる
僕が空き家問題を扱った動画で意識したのは、以下の両方を映すことでした。
- 「空き家の数」といったハードなデータ
- 「空き家をリノベしてカフェを始めた若者」「地域のおじいちゃんが案内役をしている様子」
撮影中、地域の人から以下のような声が出てきました。
「実は、あの空き家がこんな場所になったなんて知らなかった。」
「外向けの動画が、内向けの気づきにもなるんだ」と感じた瞬間でした。
単に「こんなに大変です」と課題の深刻さを並べるだけでは、受け手に無力感を与えてしまいます。「動き始めた人」と「小さな変化」を映すことで、「自分も何かできるかもしれない」という気持ちに繋がりやすくなるのです。
「数字」と「顔」の両方を出す
総務省の調査や各種研究では、動画が以下の点で紙媒体と大きく違うと述べています。
- 対象の具体的な様子を視覚的に見せられる
- 感情や雰囲気も含めて伝えられる
一方で、課題の背景や規模感を理解してもらうには、以下のデータも欠かせません。
- 人口・高齢化率・空き家率
- 相談件数や支援制度の利用実績
僕は、以下のような構成をよく使います。
- 開始30秒以内:1つだけ「強い数字」を入れる(例:空き家率◯%、ひとり親世帯の割合など)
- その後は、ひとりの住民・事業者・子どもにフォーカスしたストーリー
例えば、以下のようにつなぎます。
「この地域では、3軒に1軒が空き家です。」(数字) 「でも、◯◯さんは、その1軒を『みんなの場所』に変えました。」(顔)
正直なところ、数字だけでは人は動きませんが、顔だけでは重みが伝わりきりません。この両方を短い時間でバランスよく入れるのが、地域課題動画ならではの腕の見せどころです。
動画で関心と行動を生み出す構成と配信の工夫
構成の基本形:「共感→発見→行動提案」の3ステップ
地域情報発信の調査研究では、以下を組み合わせることで、視聴後の行動意欲が高まりやすいと示されています。
- 視聴者の生活や経験と結びつく「導入」
- 地域の新しい面を見せる「発見」
- 視聴者が参加できる「行動の提案」
僕がよく使う構成は、こうです。
共感
- 日常のシーン(シャッターが閉まる商店街、通学路、河川敷など)
- 住民の「ついついやってしまう行動」や「心の中のため息」
発見
- 課題の背景を示す数字や専門家のコメント
- そこへ一歩踏み出している人や取り組みの紹介
行動提案
- 視聴者ができる小さな一歩(イベント参加、寄付、シェア、アンケート回答など)
- 「翌朝の通勤路でここを見てみてください」のような具体的な呼びかけ
NHKの「課題解決型コンテンツ」の事例でも、視聴者の声から課題を掘り起こし、解決の方向性を視聴者と一緒に考える番組構成が紹介されています。
正直なところ、「現状説明→課題→まとめ」だけでは、見終わったあとに「ため息」で終わりがちです。「共感→発見→行動提案」の3段階を意識するだけで、動画はぐっと「前向きな広報」に変わります。
配信設計:PR動画と課題動画を「二段構え」にする
自治体PR動画の成功事例を分析した記事では、以下の3タイプに大別し、それぞれ役割が違うと指摘しています。
- 話題性重視の「バズ型」動画
- 地域の暮らしや人に焦点を当てた「ドキュメンタリー型」
- 施策やサービスを説明する「インフォメーション型」
地域課題を伝える場合、以下のような二段構えは、かなり現実的です。
- 入口:短くてキャッチーなPR動画(課題への関心を持ってもらう)
- 本編:少し長めのドキュメンタリー・インタビュー動画(理解を深める)
僕が空き家と移住をテーマにした案件で試したのは、以下のセットです。
- 30秒:移住者の日常を切り取ったシネマティックなPR動画(SNS広告用)
- 5分:なぜ移住したか、地域の課題をどう感じているかを語るインタビュー動画
PR動画から本編動画への導線を設計しました。
マイクロアドの解説でも、「SNSで短い動画から興味を持たせ、詳しい情報はサイトや長尺動画で伝える」設計が推奨されています。
再生数だけを追いかけるのではなく、「興味→理解→行動」の流れを、複数本の動画で作るイメージです。
評価と改善:視聴回数だけでなく「関わり方」を見る
地域課題に関する映像コンテンツの研究では、「視聴率や再生数だけでなく、視聴者との関わり方をどう広げるか」が重要だと述べられています。
例えば、以下のようなポイントを見ることで、次の発信の改善点が見えてきます。
- 動画視聴後のアンケート回答数
- イベント申込み・資料請求・寄付などのアクション数
- SNSでのコメントやシェア内容
「どんな人が、どんな言葉と一緒に動画を広げているか」を見ることが大切です。
僕が自治体の動画でやって効果を感じたのは、以下のような施策でした。
- YouTubeの概要欄に、「◯◯の取り組みを応援したい方はこちら」「あなたの地元の◯◯を教えてください」といったリンクやフォームを設置
- SNS投稿では、「あなたの◯◯の思い出も、コメントで教えてください」と呼びかけ
小さな「参加の入口」を作ることでした。
正直なところ、地域課題の解決は動画1本で完結しません。でも、動画をきっかけに「声を出す人」を増やすことはできます。その声を次の施策やコンテンツに活かしていく、という循環を前提に設計すると、広報は一段深いものになります。
よくある質問
Q1:地域課題を動画で伝えることに、本当に意味はありますか?
A: あります。観光PR動画の研究や総務省の調査では、動画は地域の具体的な様子を伝え、地域愛や行動意欲の喚起にも繋がると報告されています。
Q2:どのくらいの長さが適切?
A: 目的によりますが、関心喚起のPRなら30秒〜1分、課題理解・行動促進を狙う本編なら3〜5分が一つの目安です。
Q3:制作費をどれくらい見ておくべき?
A: ケースによりますが、自治体PR動画の事例では数十万円〜数百万円規模が多いとされています。まずは小さなパイロット動画から始め、反応を見て拡張するのも現実的です。
Q4:プロに頼むべきか、自前で作るべきか?
A: ターゲットと目的次第です。戦略設計やメインとなる1本目はプロに依頼し、日常の発信や続編は自前で作る「ハイブリッド型」の自治体も増えています。
Q5:炎上や批判が怖い…
A: 地域課題は意見が割れやすいテーマですが、住民の多様な声を丁寧に扱い、データと一次情報に基づいて構成することで、リスクは減らせます。事前に関係者との合意形成も重要です。
Q6:どのプラットフォームで発信すべき?
A: YouTubeは蓄積・検索性に優れ、SNS(X、Instagram、TikTokなど)は拡散性に優れます。ターゲットの年齢層に合わせて組み合わせるのが現実的です。
Q7:字幕や多言語対応は必要?
A: 観光やインバウンド・在住外国人を含む地域課題なら、多言語字幕は大きなプラスになります。日本語のみでも、聴覚障害のある方や高齢者向けに字幕は基本的に付けることをおすすめします。
Q8:成果はどう評価すれば良い?
A: 再生数だけでなく、アンケート回答・イベント参加・問い合わせ数など、具体的な「行動指標」で見ることが推奨されています。
まとめ
地域課題を動画で発信する意味は、「しんどい現状を訴える」ことではなく、具体的な人と数字を通じて課題を「自分ごと」にしてもらい、「小さな行動の入口」を増やすことにあります。
自治体やメディアの研究・事例からは、ターゲットと目的を絞り、「共感→発見→行動提案」の3ステップで構成された動画が、地域愛や行動意欲の向上に寄与していることが示されています。
実務では、「入口となる短いPR動画」と「理解・行動を促す本編動画」の二段構えにし、視聴後のアンケートやイベント・寄付など具体的な参加の場につなぐことで、動画が単なる広報ではなく「地域課題解決の仕組み」の一部になっていくのです。
PAQLAの想い
うまく言葉にできない価値を、
伝わる映像へ。
株式会社PAQLAは、ただ映像を撮る会社ではありません。
私たちが大切にしているのは、まず話を聞くことです。企業の中にある想い、技術、こだわり、これまで積み重ねてきた物語を丁寧に取材し、「何を、誰に、どう伝えるべきか」から一緒に整理します。
「自社の魅力がうまく伝わらない」
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